Out Of Orbit
/ 葵恭







 ネクタイを引けば慣れた仕草で抱き寄せられて。
 何をされるかなんて分かりきっているから、それがしやすいように。
 ネクタイを解いてシャツの釦を外す。それもいつもの事だけれど。
「……どうしたんだよ」
 ぴたりと止まった雲雀を不思議そうに覗き込む。
「君、最近初めて会った人いる?」
「んだよ、急に。…一人いるぜ、オマエの同業者だけどな」
「ふぅん……」
 知らない、けれど。
 間違いようのないそれは同族の匂い。
「……珍しいな、オマエが他人に興味持つの」
「ちょっとね。喧嘩を売られたから」
「は…?喧嘩?」
 何の事だかという顔。
「分からなくていいよ」
 首筋に唇を寄せれば。彼の甘い香り、と同族の匂い。
 ……人のモノだって分かってやってるなんてイイ度胸だよね、…本当に。