隔世遺伝


「猫ちゃん」
「ご飯ですよお」
 キッチンで皆の夕食を作り終えた京子とハルが、味付け前に取り分けていた魚だの肉だのを皿に載せて、瓜を呼ぶ。
 にょおん、と愛らしい鳴き声と共に、するりと瓜が二人の前に姿を現した。
「はい、どうぞ」
 目の前に差し出された皿を興味深げに見つめ、それから二人を見上げて、まるでありがとう、と言うように、なーう、と可愛らしく一声鳴いて、がつがつと勢いよく平らげ始めた。

「似てないよね」
 やっぱり、とツナはその姿を見て呟いた。
「そうかぁ?」
 ツナの呟きに、山本は首を傾げた。
 山本は、瓜を見て獄寺そっくりなのな、と主張している筆頭だ。
「だって、獄寺君、女の子に愛想ないじゃん」
 逆に、瓜は女の子にだけは愛想がいい。
「あー、それはそうなんだけど……ほら、あれっておっさんに似てね?」
「おっさん?」
「保健の」
「Dr.シャマル…!」
 あ、とツナは思い出す。
 持ち主である獄寺だろうと男には愛想がなくて、女の子には愛想がいい。
 確かに、獄寺の家庭教師であるあの男にそっくりだ。
「なんだっけ、こーいうの」
「こういうの?」
 山本が、うーんと首を捻る。
 ツナも首を傾げる。
「あ、そうだ。隔世遺伝!ああいうとこ、獄寺はおっさんに似なかったけど、あいつは似たんじゃねーの」
「……ちょっと違うんじゃないかな」
 とは、言ってみたものの。
 なんとなく、その可能性を否定しきれなくなったツナだった。