表紙;歩田川和果様
「一閃」 2010/06/27
あんたのせいだ。
スクアーロ。
俺の、あたたかく優しい日常を。
あんたはその銀の一閃で、いとも容易く斬り裂いてしまう。
送られてきたビデオが五十を越え、彼の剣帝への短くも長い道程も半ばを過ぎた頃には山本の剣もまた劇的な変化を遂げていた。
同時に、山本は気付いた。
このまま、守られ許されて綱吉のそばにいたのでは、もう自分の剣はここから先の何処にも進めないことに。
彼と──スクアーロと同じ場所には、行けないことに。
- - -
「よぉ。ちょっとは見られる面構えになったじゃねぇか」
「……スクアーロ?なんで、ここに……」
吃驚した。
怖かった。
会いたくなかった。会いたかった。
「スクアーロ……」
濃厚な血の匂いさえ、霞ませて。
視界が。意識が。
彼で埋め尽くされていく。
「なんだぁ?」
スクアーロは笑っていた。
「血の匂いに欲情したかぁ?」
こんな殺戮の後には不自然過ぎるほどに、上機嫌だった。
否。こういうところだから。
彼は上機嫌なのかもしれなかった。
だが、彼の言葉は何であれ真実だった。
自分は、訳もわからないまま、昂ぶっていた。
「世話の焼ける小僧だなぁ」
全部見越しているように、スクアーロは笑った。
ずっと書きたい書きたいといい続けてきた山スク本です。
徹頭徹尾山本がスクアーロを好きすぎる話、かと。