表紙;小泉智様



「贋作フローラ」 2010/05/03



「あれ、ツナ?」
 駐車場に向かう廊下で、偶然山本に会った。
「……っと、悪ぃ、お客さん?」
 山本は、綱吉の隣に立つ美女が獄寺だと全く気付かず、いつものように気軽に話しかけようとするのを躊躇する。
 この、バカ本!
 俺だ!それぐらい気付け!
 怒鳴りつけたくなるのを、必死で堪える。
 気付かれたら困るのだから、本来山本の反応は成功だと喜ぶべきところなのだが、なんのかんの言いつつも十年来の付き合いであるこの男に、気付かれもしないというのは腹が立つものだった。
「山本」
 必死に堪えたせいで、ぎゅっと握り締めた指先が小さく震えたのに、気付かれたかもしれない。
 綱吉が、苦笑する。 
「獄寺君だよ」
「へ?」
「お前が気付けないなら、問題ないな」
「えぇぇ?獄寺!?」
 一拍遅れて、ようやく認識したらしい山本が素っ頓狂な声をあげ。
「うん、獄寺君」
 綱吉が、苦笑を深くした。


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「ぞくぞくするね」
 雲雀は、欲情を隠しもしない獰猛な顔で獄寺を見上げる。
 広いボンゴレ本部内の、獄寺の私室。
 第二の執務室でしかないそこの、来客用というよりは完全に仮眠用になっているソファに押し倒されて、雲雀は上機嫌だった。
「言ってろ」
 押さえつける──というほどの拘束力は実際はないけれど、形だけ見れば雲雀を押さえつけるように、自分の上に圧し掛かる獄寺は、長髪のウィッグこそ落としたものの、まだオートクチュールの黒いドレスを纏ったままで。
 女性の衣装、女性のメイクのまま。
 雲雀を射抜くのは、けれど紛れもなく、男の──雄の、視線だ。
 この男の仮装を世間が女と信じ、もてはやしていることなら知っている。
 まったく、馬鹿馬鹿しい。
 この、まなざしを。この、表情を。
 何故、見誤れるのか。




獄寺隼人女装本。

はやとが皆に遊ばれてるお話です
いつもどおり捏造未来マフィアですが、コメディっぽいのを目指してみました

獄ヒバ率が非常に低くなっています