四重奏 6 ふあ、と小さなあくびをひとつ。黒仔猫が布団の端で丸くなる。 「おねむかい?」 おもちゃを見つけた顔で大きな黒猫はのそりと仔猫に歩み寄った。 「…!」 ペロリと耳の後ろを舐められて叫ばなかったのは見事と言っていいだろう。銀色仔猫ならぎみゃあと盛大に叫んでいたはずだ。 「おやすみ」 言葉だけは優しく、雲雀は執拗に仔猫の毛づくろいを続ける。雲雀が少し気まぐれを起こせば仔猫の細い首など一咬みで食い破れることを両者共に分かった上での戯れ。今の雲雀に本気の殺意はないことを頭で認識し、仔猫は必死に抗うまいと耐えている。易々と急所をとられたことは、誇り高い彼には屈辱でしかないだろう。 それでも。 元々眠りにつく寸前だったのだ。眠気は容赦なく仔猫を襲い、耳の後ろは猫として生まれついた以上抗えない心地よさを齎し。 「……み」 離せ、と最後の抵抗で小さく尻尾が揺れて、仔猫は深い眠りに落ちた。 その、健やかな寝息をもう一度確かめて、ゆっくりと雲雀は黒仔猫から離れた。 固唾を飲んでその情景を見守っていた大小の銀色猫は、はぁ、と大きな溜め息を揃って吐き出した。 姿だけ見ればそっくりな二匹の、仲むつまじい親子の光景だというのに。 見ているこちらの胃が痛くなるような緊迫感を無駄に垂れ流すのはやめて欲しいと隼人は切実に思った。 |
SNSより再録 |