理由・1 イラつく。 ムカつく。 ────あの野郎。 視界の隅に黒っぽい人影を認めて、獄寺はとたんに不機嫌になった。 「獄寺くん?」 「十代目!」 窓の外をぼんやり眺めていたのが、不意に肩をいからせて空気の色を変えた獄寺の変化に気付いたツナが、声をかけると途端、獄寺は満面の笑顔で振り向く。 「窓の外、どうかした?」 「いや、何でもないっス」 「……?」 獄寺は力いっぱい否定して、だからツナは、校舎の外を歩くヒバリの姿には気づけなかった。 いらだつ。 むかつく。 あの、野郎。 今度あったら、絶対ぶっとばしてやる。 何度も、何度も。 心の中で、呪文のように唱える言葉。 負けたくなんてない。 十代目の右腕になるために。 誰よりも、強くなって。 誰にも負けない、人間になって。 負けたままでなんて、いられない。 ────ただ、それだけが心乱される理由だと信じて。 |