獄誕! 09



 小会議室に来るように、という見覚えがあるようなないような字の伝言メモに、首を傾げながらも、指示されたとおりに小会議室へと向かった。
 
 ノックを二つ。
 扉を開けた途端にポンと軽やかな破裂音を耳が捉えた。
 身構える間もなく飛来する何か。
 反射的に身をかわす。
「ちっ」
 耳に届いた明確な舌打ち。
 そっちに気を取られて、遅れて襲来する飛沫を避けそこなった。
「……な、っ」
 立ち上る芳醇な香り。
「Buon Compleanno!」
 言葉と同時にむぎゅっと抱きしめられる。
「……バ、てめ、離せ……っ!」
 振りほどこうとしたら、ますますぎゅっと抱きしめられた。
それはもう抱擁なんて生易しいレベルじゃなく、羽交い絞めとか圧殺とかそういうレベルだ。
「何しやがんだ、跳ね馬っ!?」
「え?だって誕生日だろう?」
「それがどうした!?」
 ようやくディーノの腕の中から解放された獄寺は、盛大に顔を顰めて抗議した。
「ちぇ、せっかく恭弥と二人で、お前のお祝いしようって計画したのに。つれないなぁ」
「え?」
 反射的に雲雀を見る。
「別に」
 見返す、こちらも不満顔。
「空気銃の原理だっていうから」
 ぼそり呟く。
「……おい」
 つまり空気銃の原理で俺を撃つつもりだったってことだな?てめぇ、この野郎。
 凄んだところで、全身スプマンテを浴びた状態では、様になるはずもなく。

 いまだスプマンテの瓶を傾けた雲雀の姿に。
 なんとなく。

 それでもいいか、と。
 思ってしまう程度には。

 彼らとのつきあいも長くなった、16回目の誕生日。

「言っておくけど、未成年の飲酒は禁止だよ?」
「てめぇが開けたんだろうがっ」

 そんな、怒鳴りあいも。
 いつものことだ。


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SNSより再録




一日一獄ヒバ企画ということで
9月は毎週獄誕ネタを書いてました



ちなみにディーノさんは全く二人の関係を読めていません。

超直感で全てを察してげんなりしてしまう十代目とは対照的に
ある意味全く迷惑をこうむらない、幸せな人。


これでも獄ヒバだと言い張る。