跪いて



  ごん、と骨にトンファーの当たる鈍い音。
 いや、こいつ肉の層けっこう厚そうじゃねぇか、どんなヒットのさせ方だよ、とこっそり思う。

 珍しく二人で歩いていたところを、チンピラに絡まれた。
 嬉々として乱闘に持ち込んだ雲雀が、あっという間に咬み殺すのを、高みの見物、と決め込んだ訳、だったが。

 違和感が。
 あった。



「ヒバリ」
 ホテルに戻って、広いリビングに入ったところで、不意打ちみたいに軽く足払いをかける。
 フェイント。
「……っ」
 反射的に繰り出された蹴りを、計算尽く、腹の辺りでやんわりと受け止めて。
 床に転がりながら、その足先を確保。
「何の真似?」
 床に転がりつつ、がっつり掴んだ足を離さない獄寺を仁王立ちになった雲雀が睥睨する。
「んー…」
 あえて、視線を逸らして。
 さくっと、靴を脱がす。
 頭上からトンファーが打ち下ろされない、ということは、たぶん雲雀だって獄寺の行動理由に気付いている。
 薄い、肌ざわりのいい靴下を、するりと足首から脱がせる。
 肌にぴたりとそう黒い靴下から白い足が露わになる瞬間、というのはなかなかに扇情的な光景であると思う。

「……ったく、」
 引き締まった足首を捕らえた手を軽く傾ければ、綺麗に窪んだ土踏まずに、鮮やかに一閃の赤。
「いつからだよ?」
「………朝、かな」
「朝?まだ血出てるじゃねぇか」
「そんな傷………何っ!?」
 そんな傷放っておけば治る、と言おうとした雲雀の台詞が終わるより先に、血を舐め取った。
 「こんな傷、舐めておけば治る、だろ?」
 

 珍しく絶句した雲雀に、覚えた勝利は、一瞬だった。




 
 







SNSより再録

「足蹴+足の裏を舐める」という大変エロいお題を
台無しにした感じの一作