ネクタイ しゅ。
どこか鋭い、独特の絹の音と共に、結んだばかりのネクタイが解かれる。 「あ、十代目」 よろしいですか?と許可を求められて、よくわからないまま頷いた途端のことだった。 長くしなやかな指が襟元に伸ばされ、左右の長さを整える。 右に、左に、その太い方の先が滑らかに動いて。 ぴたり、その手が止まった。 「あれ」 小さく呟いたかと思うと、今度はしゅる、と音を立てて自分のネクタイを解き、あっという間に結び直す。 「あの、十代目」 失礼してよろしいですか、とやたら恐縮しながら背後に立つと、肩ごしに伸ばされた長い腕。その腕に抱きかかえられるみたいな姿勢で、結び直される己のネクタイ。 くすぐったくて、動揺した。 今日のドレスシャツなら、こちらの方が、とか言い訳みたいに耳元で囁かれたって、余計頭が痛いというか。 誓って。 自分でネクタイを結べないわけじゃない。 ちょっとは自分だって成長した。 ただ獄寺が今やってみせたような複雑な結び方はどうしてもできなくて、もっと簡単なやり方を覚えただけだ。 「獄寺君」 あんまりこういうこと、他人にするものじゃないよ、と苦笑すれば。 もちろんです!十代目以外には決して!とかさらに的外れなことを言われて、ぐったりした。 この親友は。 その腕の中は、とびきり独占欲の強い誰かのものだということをまるで自覚していないのだ。 |
SNSより再録 WJはやとのネクタイ講座に SNS皆でネクタイに萌え転がっていた時ですね |