シャンパン+アマレット




 

「なんか飲むか?」
「ん」
 口を開くのも頷くのも億劫で、曖昧な音だけで応じれば、少しの間をおいて、差し出されるフルートグラス。
 淡い杏色の液体の中を、ごく小さな泡がゆっくりと立ち上っていく。
 どちらかといえばきりっとした印象のシャンパンに、アマレットが加えられることでなんともまろやかな香りと口あたりが生まれる。
 それでいて甘さは控えられ、香りの印象よりずっとさっぱりしている。
 名前はない。レシピもない。
 彼のオリジナルらしいそれは、洋酒嫌いの雲雀のために、試行錯誤されたオリジナルだ。
 どちらかといえば才能の無駄遣い、誤った方向への努力だと思う。
 将来の凝り性が変な方向に発揮されて、お茶の淹れ方コーヒーの淹れ方、酒の出し方だけは、プロ顔負けのレベルに達してしまった獄寺のそれは、どちらかといえばマフィアのボスの右腕というよりは下っ端OLの属性じゃないのか?と皮肉に眺めてみたりもするけれど。
 僅かに舌先で弾けるシャンパンの口当たりとアマレットの香りに、それさえもどうでもよくなって。
 グラス一杯飲み干す頃には、口淋しくなるのは、絶対、何かの罠だ。
 
 けれど。
 その、甘い罠にみすみすと嵌ってやる自分に呆れながら。
 
 アマレットより甘いキスを、ねだった。
 




シャンパンにアマレットは
先日、某様と
行ったお店のスタッフさんのオリジナルだそうです

すごく美味しくて萌えた