リング返上



 ボンゴレリングを破棄すると綱吉が決定した時、守護者達の反応はほぼ予想どおりだった。




「おう、そうか」
 晴れの守護者は、なんの屈託もなく、笑顔でリングを渡した。




「どうぞ」
 雷の守護者は、恭しくリングを差し出した。
 年齢の割に大人びた外見の少年は、けれど本当はまだかつて綱吉達がその命を賭けてリング争奪戦を繰り広げた年齢にさえ達していないのだということを、その時綱吉は思い出した。




「仰せのままに」
 綱吉の決定に否など唱えるはずもなく。
 けれど、まるで己の身体の一部を失うかのような痛みをその翡翠色の瞳に宿らせて、嵐の守護者は、リングを返上した。
 六人の守護者──いや綱吉も含めて七人のリング保持者の中で、誰よりも彼がその指輪の象徴するものを大切にしていた。




「ほら」
 上に向けられた綱吉の掌に、柔らかく乗せられる指輪はまだ雨の守護者の体温を移してあたたかかった。
 彼の人生を根こそぎ変えたであろう小さな指輪は、自分の指に長くあった大空のリング以上に重く感じられた。




「ボス」
 くるりと大きくて雄弁な隻眼が、じっと綱吉を見つめていた。
 最後に一度だけその細く華奢な指にあっては不釣合いに厳つく見える霧のリングに視線を落として、ゆっくりとそれを手放した。
 まるでそのリングだけが、彼女とボンゴレを繋ぐ細い絆であったような、そんな焦燥感が綱吉を捉えた。



 
「嫌だ」
 雲の守護者は、綱吉の提案をあっさり退けた。
「勝手に押し付けておいて、今度は返せ?ずい分勝手だね」
 皮肉めいた笑みが、その怜悧な口元に刻まれるのを綱吉は、どこか救われた心持で眺めていた。
 ボンゴレリングの持つ意味など一顧だにしない彼だからこそ、その指輪の持つ純粋な力にはひとかたならない関心を抱いているのだと知っていた。
 一番リングを必要としない雲雀恭弥だからこそ、綱吉に対して拒否を口にできるのだと分かっていた。
「我侭なのは分かっています」
 彼が拒んでくれるからこそ。
 綱吉は、さらに強くあれるのだ。






 その日。
 世界から、ボンゴレリングは消えて。

 本当の戦いが始まった。











外を歩いていて、突然思いついたこと


いや割とずっと漠然と考えてたことでもあるんですが

綱吉がボンゴレリングを砕いて捨てると決めた時
皆どんな反応したんだろうなぁって


これをベースにもう少しちゃんと
そこら辺のお話を書いてみたいと思いつつ



メモ書きがわりに置いておきます