こどもの日




 地下の秘密施設の、贅沢に作られた人工庭園には、この季節になると花菖蒲が大輪の花を咲かせる。
 その日になれば、風紀財団委員長専用の広い浴室の檜風呂には菖蒲の葉が浮かべられ、並盛商店街の和菓子屋で買い求められてきた柏餅と粽が、三時のおやつに振舞われ、昼食には極上の牛挽肉を使ったハンバーグの皿が用意される。
 「こどもの日」だから。
 5月5日という日に特別なしつらえをする理由を問えば、風紀財団の者は皆そう答えるだろう。


「素直に誕生日くらい祝わせてやれよ」
「興味ないよ」
 そう言いながらぱくと咥えたフォークには白いケーキ。
 これまた並盛商店街で買われてきたケーキ屋の、ショートケーキだ。
 いびつに切られたそれに少しだけヒバリは眉をひそめたが、特に文句の言葉は出なかった。
「大体、何の用?」
「あぁ?だから十代目からの大事な書類だって言ってんだろうが、それ!」
 雲雀の手元の文机に放り出された書類を示して、獄寺が声を張り上げる。
「……」
 興味なさげに、ちらりとだけ視線を流して、また雲雀はそっぽを向いた。
「言いたいことがあるなら、言えば?」
「……何を、だよ」
 その黒い瞳でひたと見つめられて、一瞬獄寺は怯んだ。
「さぁ」
 これ見よがしに、ショートケーキホールで手土産だ、なんて言って。
 竹寿司の寿司折の中身なんて、エンガワとカンパチに決まってる。

 無関心vs意地っぱり。


 誕生日、おめでとう。
 そんな簡単なひとことは、ファミリー一つ攻略するより、ずっとずっと難しい。



 

 
 













突発ひば誕生日



うっかり書きたくなった自分はバカだと思う
……眠いよ