夜の闇みたいに真っ黒で、揺らぎの乏しい瞳が、まっすぐに獄寺を見つめる。
 イタリアにも黒い目の人間は少なくないが、雲雀ほど真っ黒な目はあまり見たことがない、と獄寺は思う。
 逆に目も髪も黒いのが当り前、相手の容姿を説明するのに目や髪の色を挙げる必要のない日本人である雲雀にとって、獄寺の髪と瞳はとても分かりやすい異質のサインなのだろう。最初は横暴にも校則違反だと取り締まられかけたものの、この髪も眼も好むと好まざるとに関らず、どうしようもなく自前なのだとようやく納得してはくれたらしい。

「それ、何色?」
「へ?」

 間近に覗き込まれて、心臓が跳ねる。
 それ、が己の瞳を指しているのだと気付くのに、時間がかかった。

「……みどり?」
 なんとなくその真剣さに負けて、答える自分が疑問系になるのが、悔しい。

 緑。翠。碧。
 自分にとって1/4の母国である国の言葉に不自由を感じたことなどないけれど、その微妙な色彩を的確に表現できるほどには、堪能でもないのだ。

「………」
 何故か、雲雀も黙り込む。
「おい」
「………いいよ、どうでも」
 不意に背を向けて、すたすたと去っていった雲雀の真意は、結局獄寺にはまるで分からず。
「何なんだ、あいつ……」
 訳の分からなさを、結局むかつく、という一言に置き換えて、獄寺は新しい煙草に火をつけた。



 
 いらいらする、と。
 雲雀は、思った。
 彼の、時折自分に向けられる視線が気になるのは、ただ、あの淡い瞳の色が何色なんだかよく分からないせいだと、そう思っていたのに。
 あの、柔らかくてどこかくすんで、それでいて不思議に透明感のある翠を示す色の名を、雲雀もまた見つけることはできず。

 
 間近に覗き込んだ瞳は、当分、忘れられそうになかった。




’08.01.04 a.m.01:08







先日激可愛な三人娘をお嫁に下さった玉野さんが
正月早々ものもらいにかかられ たそうで.

ものもらいはひとにものを貰うと治るそうなので
何か差し上げまし ょうかとお尋ねしたところ
ものもらいにちなんで目ネタで何か、との
リクエスト でしたので
その場でこんなものを書いてみました



ごくでらの目の形容詞が分からなくて
困っているのは私です