先生達の憂鬱 「どーした、跳ね馬。しけた顔して」 凄腕の殺し屋が、へろっと笑ってディーノに声をかけた。 「いや……こういうのは、慣れねぇなと思って」 彼は、キャバッローネ十代目ボス、跳ね馬と呼ばれるようになった今でも、ディーノをガキ扱いできる数少ない旧知だ。 自分が先頭に立って戦うことなら、何も怖くない。 ボスは守られていろと部下を死地に赴かせることにも慣れた(慣れたくなんかなかったけれど)。 けれど、こういうのは知らない。大切に思う誰かを戦いに送り出しながら、自分は最後の最後で部外者でしかない、なんて。 「大人になるって、そーゆーことだ」 隣で、シャマルが笑う。 ガキってやつは、いつだって自分達だけが主役で。 脇役の大人達に、そこから先の舞台に踏み込む権利はない。 つい先日までは、彼もまた子供としてリボーンに育てられていたのだ。 そこに引かれた目に見えない線は、少なからず彼には痛みを与えるものだろう。 そこは、二度と戻ることの許されない、子供の領域。 「初めてあいつにボム教えてやった時、あの馬鹿傷だらけになってなぁ」 こんな結果になるなら教えるんじゃなかった、と。 大人げもなく、怒ったものだった。 「今は?Dr」 「今は……そーだな」 これ以上傷つかないようにと願うからこそ強くなれと教えてやったところで。 体当たりしないと何一つ理解しない馬鹿な子供達は、次から次へと新しい壁にぶちあたって、ぼろぼろになって。 そんな姿を見たいわけじゃない、と何度後悔しても。 「……今度こそ、見限ってやろうって思ってるんだがね」 今は。 「お前さんは?」 「んー……そうだな、ちょっと、怖いって思ってる」 ファミリーではない、守るべきものではない、未成熟な子供。 全てを負うことに慣れてしまったこの身に、最後の最後で自分は何の責任も負えないということは、とても怖い。 預けられた時には、自分の持つできる限りを与えてあげようと、ただそれだけに夢中でいられたのに。 「ホント、なんの因果かねー」 誰かを、教える、なんて。 苦労ばかりで。 何の得にもならないというのに。 ただ、あの子の、眩しいほど鮮やかに成長していく姿を、誰より一番近くで見ていることができるという。 たった、それだけの、けれどかけがえのない幸福。 「……俺のモノになんか、絶対ならねーのになぁ」 大きく嘆息すれば。 「ホントにね」 珍しく、彼もしみじみと同意した。 |
シャマ+ディノで、先生達のぼやき 心情的な前提として シャマ獄でディノヒバで獄ヒバなのですが 別に何もなくても成立する会話 先生がどんだけ頑張って教えても 結局勝負は教え子自身のものですから |