枕について





 自分は眠りが浅いらしいという自覚は随分昔からあった。
 世の中に群れている草食動物の多くは一度眠りについたら、そうそう目を覚まさないらしい。
 それを羨ましいと思ったことなどないけれど。


 最近手に入れた枕は、何故か安眠を保証する。
 朝まで一度も目を覚ますことなく眠り続けるのは悪くない。
 だから、その枕が大嫌いなタバコ臭くても、妥協することにしたのだ。



「おい」
 うるさい。
 枕が喋るな。動くな。
「上着くらい脱げって」
 枕の、くせに。
 ジャケットを脱がせ、ネクタイを抜き、ベルトを外すその手慣れた様も気に入らない。



 熟睡は保証するくせに。
 なかなか寝付かせてはくれないのが、この枕の最大の欠点だ。






























SNSより再録




安眠枕について
ひばりさんの言い分