風邪 3


 


 こほこほと咳こんでしまえばもはや不調をごまかすことも叶わず。

 今すぐ帰って。ちゃんと寝て、との十代目の優しい気遣いはありがたいけれど、我が身の不甲斐なさが身に染みる。

 そんな時に限って。
「やあ」
 狙ったように目の前に現れる悪魔みたいな恋人は、最初にトンファー、ついで口づけをくださる訳で。


 普段なら余裕でかわせる程度の一撃に足元をふらつかせ。
 深いキスに呼吸困難。


「ちょうどいいじゃないか」
 なんて、おい何がだ、と掠れ声で抗議すれば。

「汗をかいたら治るよ」
だと。

 信憑性のかけらもないことは、お前が証明済みだろう。










SNSより再録



風邪っぴきごくひば
もっかい大人ver.