ツンデレ



「獄寺ってさ、けっこうヒバリのこと好きだよな」
 その日も、天然野球バカこと山本の直球は、前触れもなく獄寺に投げかけられた。
 な?と笑いかける笑みは、一見本当に何の意図もなさそうだった。
「なっ!何言ってやがる!」
 獄寺はといえば、うろたえていた。それはもう見事に。
「お、俺はあんなヤツ、なんとも…っ!」
 その、あまりにギャルゲーお約束な台詞に、ツナはちょっと呆然としてしまった。
(獄寺君って、ツンデレーっ!?)
 ツナに対しては、しばしば見当外れの賞賛に言葉を惜しまない獄寺である。喜怒哀楽も、大変分かりやすい。
 そして、ヒバリに対しても、大変素直に毎回毎回つっかかっていく。
 その、獄寺が。
(……)
 ツナは、恐る恐る傍らの友人の横顔を盗み見て、一見不機嫌そうに顰められたその端整な貌に宿る感情が、決して憎しみや嫌悪といったネガティブな感情ではないことを確信する。
 そう、たぶん、きっと。
(……照れて、る?)



 少しずつ。
 少しずつ。

 頑なな友人が変わっていく。
 
 それは、ボンゴレの超直感なんかに頼らなくたって分かる、とても単純なことだった。