おやすみ 2
 
 




 まったく。




 零れる嘆息。
 三ヶ月ぶりに会った恋人は、再会十五分後には、自分より畳と体温をわかちあいたそうな様子で、上体を揺らしている。
「ねぇ」
 眠りたいなら、帰れば?

 起きて、それだけが取り得みたいに整ったその顔に、畳の筋目つけるくらいなら。
 隔壁一つ隔てたその向こうの、自分達の基地に帰って、自分のベッドに潜りこめばいいだけの話だ。

 そして3時間でも5時間でも10時間でも。
 好きなだけ眠ってから、会いにくればいいのに。



 なのに。


 会いたかった。
 そう抱きしめてきた腕の強さが、そうしないことの全てを物語っているから。
しょうがない、から。
 1時間だけ、待ってあげようか。



 それで起きなければ、この手で畳に沈めてあげるよ。














SNSより再録



子守唄SSシリーズ