四重奏 21 夢にうなされて真夜中に飛び起きた。 心臓が、ばくばく鳴っている。 怖い。 夜の闇は、はやとを四方から取り囲み、押し潰す。 息ができなくなる。 怖い。 苦しい。 「……っ」 ゆらり闇が動いて、はやとは跳び上がった。 闇の中でも一際深く艶やかな黒は、小さな猫の形をしていた。 「ひば、り……」 はやとは、その闇の名前を思い出した。 ひそやかに、規則正しい息遣い。 黙って。静かに。 仔猫の形をした闇が、はやとの様子を窺っているのが分かった。。 「……どうしたいの?」 どうしたの、ではなくて。 どうしたいのかと、問われた。 それが思いがけなくて、目を瞬かせた。 どうしたいのだろう、と思ったら、するりと答えは口からこぼれだしていた。 「一緒に寝たい」 「そう」 答えはそっけなく。 けれど、少しだけ、闇が動いた。 少し。ちょうど身体半分。 それで、ひばりの布団には、二匹並んで眠れる場所ができる。 もぞ、と自分の布団から脱け出して、ひばりの隣へもぐりこむ。 「………おやすみ」 「……」 ありがとう、と上手く言えなくて。 おやすみ、と言った。 おやすみ、と返してくれる言葉はなくて。 ただ、並んだ手が触れたから。 その手を握り締めた。 もう。 ずっと。 一人じゃない。 |
SNSより再録 にゃんみゃんも20話を過ぎて ちょっとだけ仔猫達の関係が変わってきます |