四重奏 18

 




 絵本の読み聞かせは、隼人の役目だ。
「よんで」
 本を持ってくるのは、たいてい黒仔猫で、お話が始まればたいていどこからともなく銀色仔猫も寄ってきて、気がつけば大きい方の黒猫も寝そべって聞いている。
 今日の絵本は異国のお伽話。森に捨てられた兄妹が、お菓子の家に迷い込むお話だ。
 ビスケットの扉。氷砂糖の窓。
 食いしん坊の仔猫達は目を輝かせて聴き入っていて、こう素直だと可愛いものだと、隼人の親バカ根性をくすぐった。


 
「おやつにしようか」
 絵本は終わって。
 すっくと黒猫が立ち上がる。

 いつもなら、そこで目を輝かせるはずの仔猫達が、なにやら今日は大人しい。
「どうした?」
 見下ろしてみても、なにやら様子がおかしい。
「ねぇ」
 黒仔猫が小さく、銀色仔猫の袖を引いて耳打ちする。
「太らせるつもりなのかな」
「や、やっぱり、そう、かな」
 銀色仔猫までが頷いているのが、丸聞こえで。
「…っ!」
 堪らず吹き出した。



 森の魔女なんかより、ずっとずっと怖ろしい黒猫は、今頃上機嫌で、今日のおやつのケーキをを切り分けるための包丁を持っている頃だろう。












SNSより再録



別の意味で食べ………

なんでもありません