四重奏 14 





「おら」
土産だ、と大きな銀色猫が二匹の仔猫にくれたのは小さな雲だった。
少なくとも小さな銀色仔猫はそう思った。
割り箸に捕まえられた小さな雲を二匹は食い入るように見つめていた。
「なんだ、食わねぇのか?」
「!?」
「食えるのか!?」
「綿飴だから当たり前だろ?」
綿飴なんて知らない二匹はびっくりした顔でおずおずと口をつけて、一拍おいて瞳を輝かせた。

ふと見れば、黒仔猫はあと二口ばかりになった綿飴に黙々とかじりついているが、銀色仔猫の手からは消えている。
「早いな、もう食っちまったのか?」
「へへ」
仔猫の得意げな笑顔はてっきり綿菓子に満腹したゆえのものだと信じて。
疑問に思いもしなかったけれど。



翌朝。
「うにゃああああ」
朝の静寂に、哀れな叫び声が響き渡る。
「……あぁ?チビお前何やって……」
顰め顔。
うるせぇぞ、と言いかけた文句は、割り箸握り締めて半泣きの姿を前に、途切れる。
その割り箸に纏わりついている残骸の正体に気付いてしまえば、何も言えなくなるではないか。
「……バカだな」
自分に良く似た銀色の毛並みを、そっと撫でる以外にどうしろというのか。

これだからガキは、と溜め息一つ。
そんなガキ一人、慰める言葉を持たない自分に、さらに溜め息一つ銀色猫はこぼした。




















SNSより再録


雲はお空に帰ったんだよ


とか子供向けの都合のいいことを
言ってやれない隼人なのでした