四重奏 13 頭のてっぺんから、湯をかける。 基本的に他人のいうことになど耳も貸さない傍若無人我侭勝手な仔猫が、この時ばかりはじっと身を硬く大人しくしている。 耳も尻尾もぴくりともしないで、強張って。少し嫌そうな顔で眉のあたりを顰めているものの基本的にはポーカーフェイスの可愛げのない黒仔猫が、実はお風呂嫌いだなんてことは、実のところ皆知っている。 猫の本能として、水に濡れることは苦手なのだろう。けれど決して弱みを見せまいと、黒仔猫は黙って隼人が風呂に入れるのに淡々と従っている。 小さな銀色仔猫が毎回毎回風呂を嫌がっては大騒ぎをし、それをまた面白がる大きな黒猫に弄られまくって、さらに騒ぎを大きくしているのとは、あまりに対照的だ。 ふわふわに泡立てた石鹸で、頭のてっぺんから尻尾の先まで、丁寧に洗って、綺麗に石鹸を流せば完了だ。 ふかふかのタオルで頭からすっぽりと包み込んで、そっと丁寧に水気を拭ってやる。 吸水性が抜群によいタオルは、大きな黒猫もお気に入りの、とても手触りのよいものだ。 隼人の手の下、タオルの中で、仔猫は相変わらずじっとしている。 濡れてぺしゃんこになっていた耳の毛並みが少しずつ本来のふわふわ加減を取り戻す頃には、強張っていた仔猫の身体も少しずつ解けてくる。 緊張していたのだろう、くて、と小さな身体が膝に凭れかかってくるのに、隼人は気付かれないように小さく笑みを浮かべた。 |
SNSより再録 ひばりを拭いてあげるはやと …をにゃんみゃんでやってみました |